スイート・プロポーズ

「ただの気まぐれよ。いらないなら、捨てて」

「捨てない。連絡しても?」

「仕事中は無視するから」


美琴の言葉に、薫は嬉しそうに笑う。


「言っとくけど、許したわけじゃないから」


これが、今の自分にできる精一杯の譲歩だ。


「うん。それでも、ありがとう」

「・・・・・・帰る」


美琴は歩きだす。

今度は、振り返ったりしなかった。


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