スイート・プロポーズ

あんたは知らないのよ。

私がどれだけ・・・・・・。


どれだけあんたを、好きだったか。


「最悪の気分だわ・・・・・・」


長い髪が、風で揺れる。

そろそろ切らなきゃ。


『美琴の髪、俺好き』


蘇ったのは、薫が言った8年前の些細な一言。


ねぇ、今もそう思ってる?


美琴は振り返り、そこにまだ薫が立っているのを見つけて、目を伏せた。


「・・・・・・美琴?」


早足で歩み寄った美琴は、ドンッと薫の胸に何かを押し付けた。


「・・・・・・いいのか?」


押し付けたのは、自分の名刺。

そこには、番号と一緒にアドレスも書いてある。


< 180 / 294 >

この作品をシェア

pagetop