スイート・プロポーズ
「な、何でもない!」
逃げるように、円花が歩き出す。
その顔は、相変わらず真っ赤だ。
(言えるわけないわっ)
自分を呼ぶ美琴を無視しながら会社に入れば、タイミングが良いのか悪いのか。
夏目がいた。
円花に気づくと、夏目は優しい笑顔を浮かべてこちらに歩み寄る。
「どうした? 顔赤いぞ」
「…………」
触れようとした夏目は、ここが会社だと思いだし、伸ばしかけた手を名残惜しそうに引っ込める。
そんな夏目の顔を見つめて、円花は諦めのため息をつく。
そう、あの日――自分は離れがたかったのだ。
この人に、触れていたいと思った。
「厄介だわ……」
この感情は、一旦認めてしまうと底が見えない。