スイート・プロポーズ
それは、些細なことだと笑う者もいるかもしれない。
けれど、聞かずにはいられなかった。告白した後に、海外転勤の話が来たのならばいい。
でも、逆だったら?

「部長、教えてください。どっちが先ですか?」

「それは……」

夏目は言いにくそうにしている。
つまりは、そういう事だ。

「海外転勤が、先なんですね?」

「……あぁ」

頷く夏目を見て、円花は唇を噛む。

「どうして海外転勤の話が出てるのに、告白したんですか? 私が断ると思っていたから?」

だとするなら、今の自分の気持ちがあまりにも哀れでならない。
波奈は、この転勤は出世コースだと言っていた。夏目は受けるだろうし、上も受けさせるはず。
この関係の終着点が、見えない。

「小宮、俺は……」

「……私が受け入れた時、どう思いました?」

あの時、夏目は既に海外転勤の話を受けていた。
どんな気持ちで、告白したのだろう?
どんな気持ちで、円花の隣にいたのだろう?

「期間は、どのくらいですか?」

「短ければ、2年」

2年ーーあっという間だと言う者もいるだろうが、円花には自信がなかった。好きだと自覚したのは、つい最近。
夏目のように、何年も思っていたわけじゃない。離れれば、気持ちも離れてしまう。

「すみません……今日は、帰ってもらえますか」

気持ちが落ち着かない。
もっと前向きに考えればいいのに、今は混乱している。

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