水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


「そっか、
 連絡がつかないと心配よね。

 不安な日々は、一緒に過ごして
 楽しいこと考えましょうか?

 今、私……編み物に挑戦してますの。

 って言っても渡す相手は、彼氏ではなくて
 お父様と、お兄様。

 そしてお母さまだけど」



そう言いながら、鞄の中から取り出したのは
毛糸玉と、編みかけの何か。



「うわぁ、綺麗。
 編みながらいろんな模様が作れるのね。

 これは、何になるの?」



興味深々で、手を伸ばして見つめる。



「妃彩ちゃんもやってみます?
 ほらっ、氷雨君に。

 もう少しでクリスマスでしょ」


「そうだねー。
 でも私に出来るかな?」

「出来る出来ないより、
 気になるならやってみたらいいと思うのよ。

 はいっ、どうぞ。
 鍵針も編み棒も予備がありましてよ」




そうやって手渡された鍵針。



和花ちゃんの鞄の中から大量に出てきた
色とりどりの毛糸。



その毛糸は、どれもが和花ちゃんが教えて貰ってる
編み物の先生が草木染で色を付けた終わらかい毛糸たち。


その中から、灰色と薄い青色が混ざったような
そんな毛糸を手に取った。




「まぁ、妃彩ちゃん。
 
 こちらは、
 梔子(くちなし)の花で染めたそうですわ。

 梔子の花は、真っ白い花をしているのに
不思議ですわよね」


そういいながら、和花ちゃんは携帯を操作して
梔子の花を見せてくれた。



「この花で、こんな風に染まるの?

 私……もっと、
 濃い色になるのかと思いました」

「ホントね。
 草木染って素敵よね。

 実際の花びらのいろと、染まった布の色。
 予想外に染まるのですものね。

 来週には、草木染と絞り染めの課題がありますわ。

 さっ、色も決まったことだし、
 初めての妃彩ちゃんには、定番のマフラーを。

 マフラーなら、
 サイズがわからなくても作れるもの」
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