水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 

22.クリスマスイヴの約束 -妃彩-



氷雨くんに逢えないまま、
時間だけは流れていく。



氷雨くんに頼まれたからって、
氷室さんがサナトリウムを何度も何度も
訪ねてきてくれるようになった。


氷室さんや、和花ちゃんと一緒に過ごす時間も
楽しくないわけじゃない。


楽しくないわけじゃないのに……
やっぱり、凄く寂しいの。



学校の勉強って言ってたけど、
それは本当なの?



同じ受験生だって言う、氷室くんは
こうやって私のところに来てくれる。



補講がどうのって言われてしまったら、
私には何も言い返せないけど、
だけど……会えないまま、過ぎていく時間は
私は凄く不安にさせていくの。




氷雨……、
アナタの顔が見たくて。




氷室さんが帰ってしまった後は、
なんだか、一人でグルグルしてしまう。



ねぇ、氷雨くん、
本当は何があったの?

私にも秘密にしてないといけないこと?



「春宮さま、
 和花お嬢様がいらっしゃいました。

 後で、紅茶をお持ちします」


今井さんが一礼して、席を外すと
氷室さんと入れ替わるように、
30分経たない感じで、
訪ねて来てくれたのは和花ちゃん。



一度、学院からサナトリウムに一緒に戻ってきて
その後は、塾とピアノのお稽古に出掛けてた和花ちゃんは
習い事が終わって、
再びこの場所へと戻ってきてくれた。



「ごきげんよう。
 妃彩さん」



そう言いながら入ってきた和花ちゃんは、
何時ものように、
私の車椅子近くの椅子へと腰掛けた。



「氷雨君、まだ音信不通なの?」




そうやって話しかける和花ちゃんの言葉に
コクリと頷いた。
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