水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 

24.未来に繋がる想い -由貴-




「氷室さん、氷雨くんがね
 クリスマスイヴに逢ってくれるって
 この間約束してくれたの」



氷雨に頼まれて以来、
何度となく足を運んだ
彼女の住む桜ノ宮サナトリウム。



氷雨と連絡がつかなかった間は、
彼女は笑っていても、何処か寂しそうだった。


だけどそんな寂しさを押し殺すように
何度も作った笑みを浮かべてた。



学校の勉強をやっていたり、
編み物や、草木染をやったりと過ごす
彼女と彼女の親友の傍ら、
私は紅茶を頂きながら、彼女たちの会話の聞き役に回る。



時雨や飛翔に内緒にしながら、
隠れるように続けた、春宮さんのもとへと通い続ける時間。



その時間が私の中で、倍音ヒーリングを聴きに行く
教会と同じような意味合いを持ち始めていた。



氷雨と連絡が取れた後の彼女は、
作り笑いじゃなくて、本当に素敵な笑顔を見せてくれる。


彼女の苗字の中に含まれる、春の字に相応しい笑顔。



そんな彼女の笑顔は、
私の不安も悩みも全て包み込んでくれるような
そんな、包容力に満ちた笑顔。

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