水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 




何度も通いつづめる為に、
彼女と私の共通点を知った。



こんな共通点などなければ良かったと
思うけれど、それでも……両親を事故で亡くすと言う経験をしていた私たち。




私の両親は飛行機事故で同時に失った。

彼女の方は、車同士の交通事故で両親を失って、
唯一、彼女だけが生き残った。

その時から、片足が麻痺してしまったように動かないものの
どうして動かないのかが、原因は一切わからないままだと言う。


そして……両親を失った後に、
私と彼女は、大きく違いがあった。



私は、一度は施設に預けられたものの
すぐに時雨と氷雨の両親が、
迎えに来て後見人として成人するまでの保護者役を引き受けてくれた。


だけど……彼女は施設を転々としながら、
あの日、自分の命を終えようとして氷雨に出逢ったという。


私が知る、この桜ノ宮サナトリウムで幸せそうに生活している
彼女とは想像もつかない生い立ち。



彼女が施設を転々として辿り着いた最後の場所は、
県の指定も許可も下りていなかった、
暴力団がバックに経営している闇施設。



その場所で生活するのが辛くなって、
自殺まで思い立ったのだと、彼女は教えてくれた。




それを思うと私は……改めて、
今十分に幸せに生きてこられたのだと
はっきりと噛みしめることが出来る。




誰かと比べるものではないと知りながら、
自分にいっぱいいっぱいで、見えてなかった想いが
視えるようになってくる。




そんな彼女の心が、桜ノ宮サナトリウムで
氷雨のすぐ傍で、ゆっくりと治癒されていく時間。





そして私の中でも、医者になりたいと言う夢が
また少し現実として近くなった。

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