水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 




自動ドアが開いて、
閉鎖された空間から、
解き放たれた明るい世界。



肺いっぱいに
流れ込む空気を
胸いっぱいに吸い込んで。


手だけは、
車椅子の車輪を回し続ける。



徐々に早くなるスピード。

下り坂の勢いもあって、
一気に加速する車椅子。


流れていく景色を感じながら
急な坂道を降りていく。


車椅子の車輪が
悲鳴をあげてるのを感じる。

それでも更に、
車輪を加速させた。


前を向くことすらせずに、
ただ必死に、
ただその瞬間(とき)を
望みながら。


車椅子の車輪が
石らしきものを跳ね飛ばして
大きく傾くと同時に
物凄いクラクションの音が
周囲に響いた。





車椅子から投げ出される体。






蘇る、幼い日の事故の記憶。




私もこれで……
お父さんやお母さんのところに行けるのかな?





何故か、そこに恐怖はなくて……
安心するように、瞳を閉じた。
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