水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 









「おいっ。
 起きろって」



誰かが私の体を
揺すりながら声をかける。




……生きてるんだ……。






悪運なんていらないのに……。





体を起こそうとするものの、
力の入らない体は、
痛みを伝えるばかり。



「無理すんなって。
 ったく、むちゃしやがって。
 オレの相棒どうしてくれんだよ」



眼前に広がるのは、
ガードレールにぶつかったトラック。

倒れたオートバイ。

そして……ぐちゃぐちゃに潰れた
私の大切な車椅子。



私を支えて声をかける少年は、
心配そうに見下ろしていて、
トラックの運転手らしき、男は
イライラと煙草をふかしながら、
携帯電話を片手に何かを話していた。



「オレは、
 金城氷雨(かねしろ ひさめ)。
 お前、名前は?」

「妃彩……。
 春宮妃彩」


小さく名前を告げて微笑むと
そのまま、瞼が重たくなって
ゆっくりと目を閉じた。




目を閉じる間際、
必死に私の名前を呼び続ける
氷雨と言った男の声が聞こえた気がした。


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