水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 

12.紅蓮七代目総長 -由貴-



10月初日の体育祭。

殆どの練習に参加しなかった氷雨。
毎日、練習しているのに成績が実らなかった私。


努力をした分だけ、
確実に結果に繋げていった時雨と飛翔。


それぞれの思惑が入り乱れた、
体育祭には無事に幕を閉じた。


浅間に置いての体育祭は、家族や知り合いを招いての
お祭り的な役割はなく、生徒の為だけの体育祭。


そんな背景もあって、
相変わらず、時雨は氷雨を見るたびに文句ばかり言っているけど
小母さんとの衝突を見なくて良かったのは、少しほっとした。



「由貴、お疲れ。
今日もバイトか?」

「うん。今、バイト22時まで頼まれてるから。
 今日も遅くなるって小母さんに伝えておいて」

「わかった。
 けど、最近お前……残業ばっかだろ」

「大丈夫です。
 高校生でも22時までのバイトは認められています」


そう言いながら、
体育祭の後いつものようにバイト先へと向かった。


その途中、最近の日課となっている
あの倍音ヒーリングと出逢った教会に立ち寄る。


だけどその日は、
ヒーリングが行われている時間とは違ったみたいで、
何人かの人が、祈りを捧げているだけだった。


入ってきた手前、ドアを開けて出てくのもはばかられて
椅子に座って、教会のステンドグラスを眺める。

様々な彩が、一つの芸術を象る優しい世界。




「こんにちは。氷室さん」


そう言って私に話しかけてきたのは、
先日、出逢った勇人と言う少年。


「Rizママ、水谷さん。
 彼が、先日話した氷室さん」


そう言って、後ろにいた二人に声をかける。


一人の女性は、少し外国の血が入っている女性で
もう一人の人は、ナース服を着ているところから
奥にある病院のスタッフかも知れないと感じて取れた。

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