水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


「今、氷雨って言ったよね。
 皆、氷雨さんって言ってる。

 君たちの氷雨は何ものなの?」

「はぁ?
 てめぇ、喧嘩売ってんのかよ。

 オレたちに」

「そうだそうだ。

 俺らが下手【したて】に出てたら
 好き放題、嗅ぎまわりやがって。

 ウザいんだよ。お前」



そう言いながら私の周囲を取り囲んでくるのは、
いつものこと。


だけどこんなので委縮させてしまっては、
氷雨にまで辿り着けないような気がして。



「松岡高の高橋じゃん。
って、どうかしたの?」



そう言いながら、更にバイクに乗った数人が
近づいてくる。



「優さん。
 こいつ、氷雨さんのこと嗅ぎまわってる例の……」


一人がそう言うと、
後から来たバイクに乗ってた存在は、
バイクを降りると、私の方に近づいてきた。



「お前、氷雨さんに言われなかったか?
 オレたちに関わるなって。
 輝樹、確かそんな話学校でしてたよな」

「えぇ。
 してました」

「聞いてたろ。
 氷雨さんが関わるなって言ってんのに、
 首突っ込むかな。

 お前が話しかけた奴らが、
 うちのチームに属してるところで良かった。

 間違っても、敵対の影狼一派だとお前のせいで
 氷雨さん、追いこんじまうって自覚はあんの?」


氷雨を追い込む?


氷雨よりも年下っぽい少年は、
そう言うと、金髪の髪をかき上げながら私に突き刺すような視線を向ける。




「高橋、悪かったな。

 こいつ、うちの学校の奴なんだよ。
 オレが責任持って対応する」



そう言って最初のグル-プに声をかけると、
一斉に、最初のメンバーはその少年にお辞儀をした。


そんなここに居る子たちの上下関係が全く理解できないまま、
私は、優と呼ばれた少年にヘルメットを手渡される。

フルフェイスのヘルメットを生まれて初めて被って、
後ろに乗ると、彼の体へと両手を回す。


彼が合図を送ると、一斉に買い物を終えた子たちも集合して
バイクに乗り込むと、エンジンをふかせて、コンビニを後にする。


周囲のどこを見渡しても、
まともにヘルメットを被っているのは私一人。


次第に早くなっていくスピードに、必死に運転する少年の体にしがみつくようにして
辿り着いた場所は、エスカルゴと書かれた建物。

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