水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 

14.初めてのデート 前編 -氷雨-




朔良さんがアイツを
あの場所から助け出してくれて
一週間が過ぎた。

暦の上では、
10月に入ったって言うのに
少し動くとまだ汗ばむ季節。


朔良さんに言われたことを
オレなりに考えてとりあえず
オレの未来と真っ向から向き合ってみる。


警察官になる。


そう願い続けた夢以外に、
オレがやりたい道はやっぱりない。


警察官になったら、
アイツは……
おふくろみたいに悲しむだろうか?



脳裏に描くのは、妃彩が見せる笑顔。



だけど……何となく、
アイツを信じてみたいって思うんだ。



アイツはオレがやりたいと思うことを
遮るようなヤツじゃないって。

それよりも、
背中を押して怒るんじゃないかって。


まだそんなに逢ってるわけじゃない。
まともなデートなんて一度もしてない。


それでも……
アイツが大切だって気持ちだけは
膨れ上がってる。




アイツを守るためにも……
オレも逃げられないんだ。



自分の心と。



絶対におふくろを説得して、
オレの夢を手に入れる。



兄貴と比べたいなら、
好きにすりゃいい。


おふくろの人生じゃない。
オレの未来だ……。


オレの意思を通して何処が悪いんだよ。




憑き物が落ちたみたいに
光が差し込んだ翌日から、
オレは中断していた体力づくりと勉強を
本格的に再開させた。


遅れた分、早々に取り戻す。


朝起きて、家の周りをジョギング。

兄貴たちが起きてくるころには、
朝食を終えて高校へ。

図書館で朝の勉強を終えて、
チャイムと共に教室へ。


授業中も集中力を研ぎらせることなく
1日を終えると、バイトへと向かう。


朔良さんがアイツを
守ってくれてるからと言って
全てを朔良さんにのっかるのは、
オレが許せない。

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