水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 



アイツはオレの女だ。



そう思う独占欲にも似た感情と
アイツと言う支えが、今のオレにとって
何よりの活力になるから。


バイトを終えると、紅蓮に顔を出す。


そこでも幹部室で、
ノートを広げて勉強するオレに、
有政らも協力的で、
一緒に受験勉強する日々。



そうやって過ごす時間は、休みの日以外
妃彩のところへと向かう時間がなかった。


せめて携帯でもあれば……
アイツに持たせてやれれば、
聴きたい時に声だけでも聴けるのに……。



待ちに待った給料日。

銀行で給料を握りしめて、
朔良さんに連絡をとる。


未成年のオレは
携帯を自分で借りることは出来ない。

オレが持ってる携帯も、
使用者がオレってだけで、
契約者は親父の名前だから。


朔良さんは、
数度のコールの後声が聴こえて
オレの為に時間を作ってくれた。



待ち合わせは、アイツが暮らす
桜ノ宮サナトリウム。


初めて向かうその場所に、
多少の緊張を感じながら、相棒を操る。



何処だよ此処。


思わずそう思ってしまうほどの、
黒い巨大な門がそびえた入り口。

カメラに反応しているのか、
ゆっくりとその扉が自動で開いていく。


開いた隙間からバイクを走らせて
庭園の間に走る道を移動する。


駐車場や駐輪場が見えて来て、
そこに相棒をとめると、
ヘルメットを外して一息ついた。


エントランスへ向かう。
もうすぐ、アイツに逢える。




エントランスから受付へ。

カウンターで面会手続きを取っていると、
車椅子を自分で転がしながら、
満面の笑みでオレの名を呼びながら
駆けてくる妃彩。




その後ろには、
黒服を着た男と女の子が一人。




「氷雨、逢いたかった」


そう言うと車椅子に座ったまま、
オレの腰に両腕を巻きつける。

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