水晶の少年 【第一幕 完結】※続編「SEASON」 


「元気してたか?

 忙しくてなかなか来れなくて悪かったな。
 オレ、高3だからさ。
 受験があって」

「うん。

 知ってる、
 ちゃんと朔良さんが教えてくれてる。

 氷雨、聞いて。
 今、私も高校に行ってるの。

 聖フローシア学院。

 本当は二年生の年齢だけど、
 私は学校行ってないから
 一年生なんだけどね。

 彼女は、和花ちゃん。

 朔良さんの妹さんで、
 お友達が出来たの。

 和花ちゃん、彼が氷雨君だよ。
 私の大好きな人なの」



をいっ……。


嬉しいけど、
そのストレートすぎる言い方、
照れくさいだろうが。


照れて崩れそうな顔を隠したくて、
必死にそっぽ向くオレ。


そんなオレを見て、
笑ってやがるコイツラ三人。



「遅くなって悪いね。
 今井、妃彩さんを自室へ。
 氷雨、君もね」



朔良さんが到着した途端に
サナトリウム内の雰囲気が、
一気に清浄に張りつめていく。


「それでは、妃彩。
 ごきげんよう。

 お兄様、私はこれで失礼しますわ」


優雅にお辞儀すると、
和花と紹介された女の子は、
何処かへと歩いて行った。



妃彩の部屋に初めて踏み込んだオレは、
レースとピンクのカーテンがかかった
メルヘンすぎる部屋に、一瞬ドン引きする。


マジかよ。



車椅子はテーブルの傍で固定され、
今井と呼ばれた黒服の男は、
妃彩の傍で、静かに控える。



そのテーブルを囲むように用意された
椅子に腰かけた、オレと朔良さん。

朔良さんはテーブルの上に、
携帯会社の紙袋をゆっくりと置いた。



……仕事、早すぎるだろ……。


そう思った途端、
朔良さんがチラリとオレを見る。



「妃彩、開けろよ。
 
 受験終わるまで、
 なかなか時間作れないだろうから。

 コイツがあれば、
 すぐに連絡出来るだろ」


朔良さんが用意してるのは、
オレが持つシリーズの最新機種。


嬉しそうに箱から携帯を取り出す妃彩は、
キョトンとして固まった。


「ほらっ、貸してみ」


手慣れた手つきで、
オレのデーターを入力する。

それと同時に、
妃彩のメルアドの取得手続き。 

サクサクっと手続きを終えて、
アイツの電話番号とメルアドも
オレの携帯に登録した。


「ほいっ」


手渡した携帯に向けて、
オレの携帯から
最初のメールを送信する。

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