ファーレス騎士団のゆるい日々
 ここにエディが配属になったのは、規律を乱しがちな騎士団員たちを統率するためであり、だからこそ彼らに今回のような任務が回ってくることが多い――さすがに女装は初めてだが。

オーウェンの説明にも、エディは納得した様子は見せなかった。

「何もお前たちが化粧する必要なんてないだろうが――化粧したところでむさ苦しい男でしかないぞ」

 エディは頭に手をやり、黒髪に指を滑らせる。

「十代前半の騎士見習いを女装させ、お前たちはそのつきそいという形を取ればいい――その方がよほどばれにくいんじゃないのか? 見習いだって剣はそれなりには使えるんだろう? パートナーが足りない奴は、使用人として入り込めばいい。給仕や招待客の世話係や――いくらでも手は必要だろう」
「あ」

 本気で気づいていなかったのだろうか――エディが顔をしかめている間に、野郎どもはばたばたと化粧を落とし始める。

「どうせなら、お前もやれ。お前なら格好がつくだろう」

 濡れた顔をハンカチで拭いながらオーウェンが言う。

「わたしが?」

 エディは勢いよく鼻を鳴らした。
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