ファーレス騎士団のゆるい日々
男心はわからない
 騎士団の詰め所へと戻ってきたエディは、広間に入ってくるなりあきれたような目で仲間たちを見回した。

「お前たち、いったい何をしているんだ?」
「任務だ、任務」
「バカじゃないか?」
「俺たちだってバカバカしいとは思っているさ」

 エディの視線の先にいる騎士団員たちは、皆一生懸命に鏡をのぞき込んで化粧道具を手に、慣れない手つきで化粧を施しているのだからバカバカしいと言えばバカバカしい。

「何の任務だ、何の?」
「お前聞いてないのか?」

 整った美貌からあきれたように吐き出したエディの嘆息に、これまた分厚く白粉を塗ったオーウェンが首を振る。一応ファーレス騎士団の騎士団長なのだが……へたくそな化粧を施した状態では迫力も何もあったものではない。

「次の満月の夜、舞踏会が開かれるだろう。招待客に紛れ込む必要があるんだ。某国の密偵が入り込んでいるという情報があってな、招待客に紛れて会場内に入る」
 
 ファーレス騎士団は一応騎士団と名乗ってはいるが、王宮に勤める騎士団の中では少し毛色が変わっている。貴族の師弟が所属するよりも、主立ったメンバーが元は傭兵だったり平民出だったりするために遊軍的な扱いなのだ。

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