彼女志願!2nd
「翡翠社としては、凛先生が他社と仕事をしてもまったく問題はありませんよ。もうデビューして何年も経ちますしね」
「はい……」
そうは言っても、やっぱりなんとなく、不義理をしているような気がして、穂積さんの顔をまともに見ることができなかった。
そもそもなぜ他社で書くことを言いづらいのか。
それには出版業界にはちょっとしたお約束があるからだ。
基本、作家に専属契約的なものはないのだけれど(特例として、某有名週刊少年雑誌なんかは、デビューが決まると年間いくらで専属という契約書をかわすって聞いたことがある)
投稿で、賞金を貰ってデビューした場合は俗に「三年縛り」というものがある。
これは、三年間はそこの出版社以外から本を出さない、という口約束みたいなもの。
その間に一シリーズ三冊なり、五冊なり(これは売れ行き次第なんだけど)出版するまで面倒を見てくれるってわけ。