彼女志願!2nd
「――君さぁ、押したら人見知りらしく引くのに、ふとした瞬間に心を全部さらけ出す。無意識としたら本当に危なっかしいね」
そんな私の態度とはまるで違う、まるでたしなめるような声だった。
耳元で響く低くて少しハスキーな声。
腰の上あたりに、ゾクゾクと電流が走る。
別に抱きしめられたわけじゃない。
そう、近いだけ。
そして路地裏じゃない。出版社のロビーだ。
私が危なっかしい?
先生の言うことを頭で反芻してしまう。状況を忘れて、言葉の意味に捕らわれる。
こういうところ、私の悪い癖なのかもしれない。
でもいったいどういうことなんだろう。危なっかしいって。
「あの、」
「気を付けてね」
声を絞り出した時には、すっと先生は体を引いていた。
そしてくるりと踵を返し、エレベーターのほうへと向かっていった。