私が少女だった頃
「夏休みが終わっても、またこうやって話してくれる?」
私が聞くと、木下は「もちろん!」と頷いた。
疑うという言葉を知らなかった私は、木下の言葉を何のためらいもなく信じた。

夏が終わっても、秋が終わっても、冬が終わって春になって違うクラスになったとしても、この藤棚の下に来れば木下と会える、そんな気がした。

漠然と描いた未来は、何の根拠もなくて。
ほんの一突きで崩れてしまいそうな幼稚な設計図だった。

けれど、のばされた小指に私は自分の小指を絡めた。

「嘘ついたら飼育小屋のウサギのフン飲ーます」
私の言葉に木下は「え!?」と声を上げて、それから小さく顔をゆがめた。
「佐藤が言うと冗談に聞こえないよぉ」
「冗談よ」
私はピッと小指をほどいてそう言うと、その日初めて小さく笑った。
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