Kiss Kiss Kiss
「何度かスカウトされていたんだけど
そこに入ることにした。」

名刺を朝陽さんに差し出した。

「親父なら知ってるだろ?」

「ああ……
ここに入るのか?」

名刺を見ながら朝陽さんが言った。

「本格的に始めてみようかと思う。
親父とババァには 迷惑かけるけどさ
できそこない二世なもんで……。」

「真剣に言ってるのか?
あの世界はそんなに楽じゃないぞ……。
おまえみたいに 外見だけがよくても
それだけじゃ仕事が来ない
すぐに成功するのは一握り あとはどん底の
貧乏や挫折苦労を乗り越えられる人間だけが
這い上がれるところだ……。
その覚悟はあるのか?」

「親父の脚本書いたドラマとか映画とか
いつか出てみたいんだ。
親父としての瀬崎 朝陽は尊敬できなかったけど
脚本家としての 瀬崎 朝陽はスゲーと思ってる。」

「父親としては最低だからな。」

朝陽さんは笑った。

「コネじゃなくて いつか自分の力で
何十年かかっても出てみたいって思ってる。」

「急にどうしたんだ?
進路を真剣に考えるきっかけは?」

朝陽さんはゆっくり司を見つめた。

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