金曜日の彼女【完】

「私はね…この子のせいにしてほしくなかっただけよ」


N.Y行きを決めた俺に聖香は穏やかな表情でそう言った。

行く直前に産まれたばかりの子供を抱きしめて―――。


「じゃあ…聖香。お前も―――…お前の夢も…叶えろよ」

「…なに言ってるのよ。私にはこの子がいればいいのよ」



「…いつか、女優になったお前を撮る…。それが俺の夢だから」


聖香がギュッと子供を抱きしめる。


「仁――…夢を…カメラマンになる夢…叶えてね、絶対に」



「ああ…」



俺は自分の夢を優先させた。

聖香よりも。


産まれたばかりの――…


龍太―――…

お前よりも。
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