金曜日の彼女【完】
「…子供は…私のママが見てくれるから…アンタがいなくても全然大丈夫」

なに言ってるんだ?

聖香は大きくなったお腹をさすりながら、俺を冷めた瞳で見下ろす。

まるで初めて会ったときのような―――…そんな瞳。


「――…アンタからカメラ奪ったらなんにも残らないじゃない…そんな男にこの子のパパにはなってほしくないし」


カメラ――…。



そう、俺は親子3人の暮らしを守るため、カメラとは関係ない仕事に就くことをすでに決めていた。

カメラはもう握らないと…俺の命の次に大事なはずだったカメラは…封印した。


それでも…大きくなっていく聖香のお腹をインスタントカメラで撮っているうちに…


俺の中でなにか――――…


くすぶる思いが―――…


そうだよな…聖香。

お前が気がつかないわけがない…。


お前だって――――…

女優になる夢を。


諦めたんだから―――…。
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