金曜日の彼女【完】
「…――ごめ……泣きたくなんか…ないのに――ごめん」

龍太の香りが涙腺を刺激した。

思わず溢れ落ちる涙を龍太がそっと指で拭う。

そして、私の腰を掴むと足と足の間に私を挟んで後ろから抱きしめる。



肩に顎をのせて小さく溜め息を洩らすと

「俺の方こそ…ごめんな」

そう呟く。

「やっぱり…ガキだな俺。約束…忘れてもいい、なんて口では言いながら…そんな自分に苛つくし…」

首筋に龍太の唇の感触。

耳元にかかる甘い吐息――…。

もうすぐ――――この感触、温もりとも…お別れ…。


「もうすぐ…会えなくなる。こんな風に抱きしめることもできなくなる。そう思うと…余計に――…」

グッと抱きしめる腕が強くなる。


「もっと…もっと早くちゃんと琴葉と向き合えばよかった――…なんで金曜日だけの…彼女にしちゃったんだろうって…」


不安定な胸の内を吐き出すように

ポツリポツリと話す。

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