Any time Any place

祖父のお葬式は、私が妊娠九ヶ月。切迫早産で入院していた暑い夏の日でした。

地元大好きな祖母は、ハイカラなセレモニーホールではなく、町内の古くから伝わるお寺さんで祖父のお葬式を営みました。

こちとら、腹は張るわ、暑いわ、畳の上で座るのは大変だわ、空調の効いたキレイなセレモニーホールぷり~ず!ってな感じでしたが、頑固な祖母が聞くはずがない。

その時、祖母もガンで余命宣告されてましたが、「この葬式を盛大に成功させるまで棺桶に足を突っ込んでたまるか!」と言わんばかりの迫力でしたねー。

すごい人数の方が参列してくださり、席も座布団も足りないし、駐車場も足りなし、暑い!参列してくださった方々には本当に申し訳なかったけど、「たまには寺の葬式もいいじゃん、じーちゃん愛されてるねー」と私は遺影に向かって笑ってました。

現実的な母は、「セレモニーホールの方が安くつくのに」と文句をぶーぶー言っていましたが、祖母は、「地元に金をばらまいておけば、いつか還元される」とふんぞり返ってました。

その祖母も、その三ヶ月後に後を追うように亡くなりましたが、自然と悲しさはありませんでしたねー。

強烈すぎた二人だったからでしょうか?(笑)

ただ一つ思い残すことは、おじいちゃんにひ孫の顔を見せてあげられなかったこと。

娘は三姉妹。孫も六人中五人が女。

待望の男の子だったのに、顔を見ずして逝ってしまいました。

祖母は、「ボケているから、誰のひ孫かも区別つかんわ」と一刀両断でしたけどー(笑)

天国で、見事に男六人続いたひ孫たちを、あの優しい笑顔で見守ってくれていることでしょう。

そして、未だに思い出す、狭い布団の中で、頭をこっくりこっくりさせながら語ってくれた、『妖怪から逃げた坊主』の話。三枚のお札とはまた異なった、おじーちゃんバージョンのその物語はまだ完結していなくて、続きが知りたい私と姉。

まっ、私が天国に行ったとき、続きを聞かせてもらうとしますかー。

電車を丸一日私のために待っていてくれたおじーちゃん、今度は私が待っててやるよ。

だから、物語のオチを考えておいてねん。



< 18 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop