モノクロ
 

「まま~」

「あっ、はいはい」


突然耳に飛び込んできた梢ちゃんの声に、私はびくっと身体を跳ねさせてしまった。

その声の方を見ると、梢ちゃんがぶんぶんと手を振って、若菜さんに向かって笑顔を向けていた。


「ごめんなさいね、この子が引き止めちゃって」

「いえ、かわいい子にナンパされて嬉しかったです」

「ナンパされるなんて、これが最初で最後だな」

「もうっ、ケイくんは一言多いの! あ、じゃあ私たちはこれで……。梢ちゃん、バイバイ」

「……」

「梢、ごあいさつは?」

「ん、バイバイっ」


梢ちゃんのかわいい笑顔に、カップルも柔らかい笑顔をお互いに見合わせて、梢ちゃんに手を振りながら歩いていった。

その後姿には、幸せオーラが見えた。

 
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