モノクロ
「では、確認お願いします。検品はこちらで行いますので、確認は一部で構いませんから。終わったら呼んでください」
「了解です」
商品管理部の人はそう言い、商品がたくさん置かれている部屋の奥の方に消えていった。
その途端、私を急かすような言葉が先輩の口から飛んでくる。
「さきこ! 早く開けろよ!」
「えっ!? こ、ここは佐山さんの出番じゃ」
「紀村の言う通り、佐々木さんの仕事だな」
「え、いいんですか?」
「もちろん。そのために連れてきたんだから」
「じゃ、じゃあ……」
佐山さんと先輩の視線を大いに受けながら、サンプル品が入ってきた箱よりも大きい段ボール箱に手をかける。
すでに商品管理部の人によってガムテープは剥がされていて、あとは中を覗くのみ。
そっと覗くと、ブックカバーの柄がよく見えるようにと余計な印刷を省いた透明な袋で梱包されたブックカバーがたくさん入っていた。
お店に並んでる商品みたいだ……。いや、実際にこれがお店に並ぶんだ。
震える手でひとつ取ると、後ろから先輩の声が飛んでくる。
「お、いーじゃん!」
「やっと完成だな」
「……」
“商品”という形になったブックカバーを手にしたまま、私は動けなかった。
……すごい。すごい……!
サンプル品を初めて手に取った時の感動もすごいものだったけど、商品として世の中に出ていくものが今手の中にあると考えると、胸がいっぱいになる。