殉愛・アンビバレンス【もう一つの二重人格三重唱】
翼は受験勉強に益々没頭した。
ともすれば両親への憎しみに負けて、気が狂いそうになる。
そんな妄想からも逃れるために。
今遣れる受験勉強をしっかりこなし、自分の存在価値をアピールするしかなかった。
(きっと母さんは殺人だと思ってはいなかったはずだ。もし傷害致死だと考えていたのだとしたら……)
もし自分の考えが正解だとしても、とっくに時効のはずだった。
時効が十年から二十年になっても……。
殺人の時効のみが廃止されようとも……。
それ以前に成立してしまっていた。
翼は改めて、十八年と言う歳月の重みを感じていた。
(あーー!! そうか時効か……)
翼は思い出していた。
薫のヘアースタイルが急に変わった頃のことを。
バッチリメイクからナチュラルメイクに変えた頃……
それはその頃時効を迎えていたからでらないのだろうか?
つまり、自分を産んですぐに殺された。
それはあの柿の実事件が起きる前のことだった。
確かに十歳の頃だったのだ。
例えバレても……
時効は成立していたのだ。
それでも薫は堀内家に行く時だけはバッチリメークを施していた。
それはきっと、勝に気付かれなかったためではないのだろうか?
だから勝の病室で必死に自分が薫だと言うことをアピールしたのではないのだろうか?
陽子と出会ってから、一年以上もの月日が過ぎようとしていた。
秩父神社への初詣は喪中のために行かなかった。
その代わりに初日の出を見た翼の秘密基地へ行ってみた。
でも此処も、神社のすぐ上だったのだ。
勝が買ってくれたワンタッチテント。
この中に入り、アルミシートにくるまれる。
過去を語り、未来の夢を語る。
翼と陽子はそこで改めて愛を確かめ合った。
初めてのデートの時見たコミネモミジ。
祖父勝の故郷を訪ねた折に見た清雲寺の枝垂れ桜。
勝の慰霊の為に訪れた熊谷での星川の灯籠流し。
それらの一つ一つ出来事によって二人の愛は育まれてきた。
そして二人はその愛の先にあるだろう、小さな命を望んでいた。
初めてのデートの時に、出来るなら翼の子供が欲しいと地蔵菩薩に祈った。
でも今まで、授からなかったのだ。
ともすれば両親への憎しみに負けて、気が狂いそうになる。
そんな妄想からも逃れるために。
今遣れる受験勉強をしっかりこなし、自分の存在価値をアピールするしかなかった。
(きっと母さんは殺人だと思ってはいなかったはずだ。もし傷害致死だと考えていたのだとしたら……)
もし自分の考えが正解だとしても、とっくに時効のはずだった。
時効が十年から二十年になっても……。
殺人の時効のみが廃止されようとも……。
それ以前に成立してしまっていた。
翼は改めて、十八年と言う歳月の重みを感じていた。
(あーー!! そうか時効か……)
翼は思い出していた。
薫のヘアースタイルが急に変わった頃のことを。
バッチリメイクからナチュラルメイクに変えた頃……
それはその頃時効を迎えていたからでらないのだろうか?
つまり、自分を産んですぐに殺された。
それはあの柿の実事件が起きる前のことだった。
確かに十歳の頃だったのだ。
例えバレても……
時効は成立していたのだ。
それでも薫は堀内家に行く時だけはバッチリメークを施していた。
それはきっと、勝に気付かれなかったためではないのだろうか?
だから勝の病室で必死に自分が薫だと言うことをアピールしたのではないのだろうか?
陽子と出会ってから、一年以上もの月日が過ぎようとしていた。
秩父神社への初詣は喪中のために行かなかった。
その代わりに初日の出を見た翼の秘密基地へ行ってみた。
でも此処も、神社のすぐ上だったのだ。
勝が買ってくれたワンタッチテント。
この中に入り、アルミシートにくるまれる。
過去を語り、未来の夢を語る。
翼と陽子はそこで改めて愛を確かめ合った。
初めてのデートの時見たコミネモミジ。
祖父勝の故郷を訪ねた折に見た清雲寺の枝垂れ桜。
勝の慰霊の為に訪れた熊谷での星川の灯籠流し。
それらの一つ一つ出来事によって二人の愛は育まれてきた。
そして二人はその愛の先にあるだろう、小さな命を望んでいた。
初めてのデートの時に、出来るなら翼の子供が欲しいと地蔵菩薩に祈った。
でも今まで、授からなかったのだ。