溺愛トレード

 私は、普通に大学を卒業後文房具メーカーのOLになった。そして実乃璃は卒業後は、家事手伝い、という世間でいうところのニートとは紙一重な職種を選んだ。かといって実乃璃は自宅を必死に警備しているわけではない。

 彼女は世界中のセレブが愛してやまない場所に出向いては、両手に抱えきれないほどのブランドを買い漁り、「海外旅行も、飽きちゃった」なんて物憂げにため息を吐き出してみたりする。

 それから、実乃璃は突然思いついたかのように華道、茶道、舞踊をはじめた。畳の上で退屈な時間をいかに潰すかをリスペクトし、和服姿で私の前に現れて「一緒にどう?」と軽々しく口にする。

 でも最近の実乃璃は、畳の上で正座したまま睡眠学習をするという行為にリスペクトしはじめたようだ。

 そんな実乃璃だけど学生時代から夜の社交の場への足は止めたことはない。

 社交の場という、群れていないと生きられない大人の溜まり場へ足繁く通い、ワイングラス片手にディスカッションをかわしているという。

 世界平和とは何かを、熱く語り合い、相手の男に「世界平和て、結局愛だよね」と言葉巧みに騙されて、ワンナイトの愛と平和に酔いしれてきたりもする。



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