溺愛トレード
「三時間も悩んでるのに付き合わされたんだよ?」と、石ころみたいに膝を抱えて座っていた徹平に抗議する。
徹平は、「わかった、わかった、ヨシヨシどーどー」と興奮した牛をなだめるように私の肩を撫でた。
「それから、プンちゃんの意見を尊重して、お父様とオープンカーを買いにいった時も私一つしか選ばなかったの。頭でも打ったのかと、お父様に心配されて、MRIの検査を受けさせられたわ。
私、MRIの機械の中で、どうして隣のオープンカーを選ばなかったんだろう。って、すごく後悔してた。
でもね、プンちゃんはいつも選んだ一つを満足そうに大切にしている」
「そりゃ、お金ないし。実乃璃みたいに次の日の朝、飛び起きた瞬間にエルメスに直行して『やっぱり残りの六色のバーキンください』とか言うバイタリティないし」
徹平は「結局、買ったのかよ」と呆れ半分、尊敬半分の関心のため息を吐き出した。