溺愛トレード
「よかった……乃亜の顔を見てたら自信が沸いてきた。きっとこの商品はお客様に喜ばれるだろう」
「はい、絶対喜ばれます」
私も瀧澤さんが仕事してくれて安心だ。三百万で売り飛ばされたうえに、毎日の送り迎えに予測不能なランチタイムを付き合わされて、売上が落ちたなんて事態になったらどうしようかと心配でたまらなかった。
瀧澤さんは呑気に皮のケースを手にとった。
「それはレターセットです」
ケースを開いて中身を取り出す。封筒に折り畳まれた便せん、ケースは持ち運びができるように取っ手がついている。
「やっぱりそうか。これと似たものを昔、実乃璃が持っていた」
「そうかもしれませんね。実乃璃はこのレターセットのシリーズを昔からよく使ってましたから……まあ、書いた手紙はろくでもないような物ばかりでしたけど…………」
実乃璃は、手紙というものは主にラブレターしか書かない主義らしく、ちょっといい男を見かけては手紙を書いていた時代がある。
メールやインターネットが主流の時代に、高級な便せんで(外見は)可愛い女から手紙をもらえば、そりゃ誰だって嬉しいだろうに。返事をしたためた男たちに実乃璃は手痛い仕打ちでとどめを刺していた。
実乃璃は「そんな手紙書いたかしら?」と、手紙を書いた事でちょっといい男
への想いは完全に消化してしまっていて、記憶の欠片も残っていなかった。
残された手紙と、期待してしまったちょっといい男の不憫な結末を何度見てきたことか……
「僕も昔、実乃璃から手紙をもらったことがある」
ここにも被害者が!?
あ、でも、瀧澤さんは恋が成就するかもしれないから被害者じゃないか。