溺愛トレード
「君は優しいね」
お好み焼きの裏側を確認しながら、目を細める瀧澤さん。
なんで、この人はただお好み焼きを焼いてる姿さえ素敵なんだろう。
「優しくなんてないです」
「そうかな?」
そうだ。私は、優しくなんかない。
だって、とにかく自分の平穏な日常だけ考えているし、瀧澤さんがどんな過去があって、実乃璃とはじめてを迎えたかなんてどうでもいいと思ってる。思おうとしてる。
知ってしまったら、私はこの人を拒絶できなるんじゃないかとか、そんなことは考えないほうがいい。
「徹平はやく来ないかな……」
うるさい店内での沈黙が辛くて、ならない携帯の画面をなんとなく光らせる。
徹平はやく来て、私をそっちの世界にとどめといて…………
すると願いが通じたのか、お好み焼きなおちゃんの引き戸が開いた。
「いらっしゃいませぇー、あら徹平ちゃん!!」
紺色ののれんを手であげながら、頭を低くしてから顔をあげた徹平になおちゃんが奇声を発しながら抱きついた。
「やっぱり徹平ちゃんも、好きぃー!! ああ、なんて可愛いの!!」
なおちゃんにやりたい放題頭を撫でられて「ははは」と笑っている徹平を見ると安心する。
「はいはい、俺もなおちゃん大好きだよ」