溺愛トレード
プロトコールにて。

────「ようこそ、プロトコールへ」


 ここには自動ドアなんて平凡なものはない。一つ一つの扉には、ドアマンがついていて、その開け閉めは彼らの仕事だ。


「実乃璃様は、プールサイドバーにいらっしゃいます。只今ご案内させていただきます」



 ジェルでびっちりと髪を固めタキシード姿の男の人の後ろに続く。


「徹平……納豆キムチ臭い……」


 徹平は、え? まじ? と言いながら、手のひらに息をはあと吹きかけて「くさっ」と鼻を摘まんだ。

 ブレスケアを二粒徹平の手のひらに落とす。

「さんきゅ、乃亜」


 振り返って微笑むタキシードに、あは、と苦笑いを返す。


 瀧澤さんは何やらこの後もご予定があるらしく桐谷さんに連れ去られていったので(どうやらお好み焼き屋も無理矢理来てしまったらしく、予定は切羽詰まっていたらしい)、私と徹平は一応実乃璃に会いにプロトコールに来た。


< 83 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop