ミッション#メロンパンを争奪せよ!
「いってきます!今日お昼コンビニで買うから!」
鞄を持っていないというのはさすがに問い詰められそうなので財布のみ持ってピュンッと家を出た。


玄関のドアを閉じて気がついた。



見なれたショートカット。


「…杏。」



そこには鞄を二つ持った杏がいた。
一つはジャラッとキーホルダーをつけた杏の鞄。
もういっこは、くまが一つついた私の鞄。

杏とおそろいのくまだ。


「…おはよ、紗緒。はい、鞄。」
杏はそう言って、鞄を私に渡した。

受け取ったカバンの中には…


「…お弁当?」

私の昨日のお弁当箱は空のはずなのに重みがあって、ほんのり温かかった。


「…あたしの手作りでいいなら…。」


杏はエヘ、と少し申し訳なさそうに笑う。

「ぜ、全然いいよ…!」


嬉しかった。

「え、えと…杏…。」


なんだか『ありがとう』が言えなくて、ムシャクシャする。



「…えと…。」



「…いこっか!紗緒ッ。」


そう言った杏はいつもの笑顔だった。



グシャグシャになって
イライラして
杏の言葉も拒絶して


そんな私に
もっかい笑ってくれるの?



「…っ。」

ポロポロと涙がこぼれた。

「え!?ちょ、紗緒!?」
オロオロとする杏。


「…ごめん、ごめんねッ…杏…ごめんなさい…杏の言葉…優しさ…無視して…ごめん…。」
涙と共に流れ出る言葉。



「…紗緒、そんなんいいよ…。…もういいよ。大好き。紗緒。」

杏はそう言って泣いた私を抱きしめてくれた。



杏、ごめんね。



ありがとう。



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