【B】(第一夜完結)Love around ※第二夜準備中

「すいません。
 電話借ります」


っと一言、断ってそのまま時雨の携帯電話へと連絡する。


だけど仕事中なのか、時雨が電話にでる気配はなく
そのまま留守番電話に、塔矢が昨日から行方不明になっている旨だけを伝えた。



そして次はステーションの電話が鳴り響いて、由貴からの一報が入る。




「早城先生、ERから至急お電話です」


看護師の声に、気持ちを切り替えて電話口へと向かう。




「御電話かわりました。早城です」

「飛翔、私です。

 今、ホットラインが入りまして、もうすぐホテルでODをして発見された女性が
 搬送されていきます」

「OD?」

「その女性の名前があの人と同じなんです。
 清水香穂さん。あなたをずっとストーカーしていた彼女と同じ名前なんです」



由貴の声に俺は慌てて、ステーションから飛び出して1階まで階段を駆け下りる。
そのままER棟に入ると、すでに救急車が到着してストレッチャーが処置室へと運ばれていた。

処置室へと駆けつけると、すでに彼女の処置は始まっていた。


胃洗浄と呼ばれる処置。


口から胃までと通したチューブを通して、活性炭入りの生理食塩水をドンドンと流し込む。
そして今度はパンパンになった水分を体内からチューブを通してバケツへと戻させる。


何度かその行為を繰り返している間に、覚醒を始めるあの女の意識。


その後も、何度も繰り返し続けられたその行為の後、
ぐったりと処置用のベットに横たわるアイツの傍へと近づいて胸倉を掴む。


「をいっ、塔矢をどうした?
 お前が何かしたんじゃないのか?」


処置室で怒鳴り始める俺に、慌てたようにスタッフの視線が集まると同時に
背後から嵩継さんが俺を患者から引き離そうと引き寄せる。


「おいっ、お前。
 塔矢をどうした?」


更に声を張り上げる俺の頬を嵩継さんは思いっきり殴り掛かる。
それと同時に床に打ち付けられる俺自身。



「先に患者を処置室から出して。
 嵩継、こっちは僕が受けるから嵩継は早城を。

 今日の彼はらしくないよ」


そう言って城山さんはあの女を乗せたストレッチャーについて処置室を出て行った。


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