真夜中に口笛が聞こえる
◇第五章 異変
 異変は、翌日に起った。

 昨日、晴れてゴミ収集車の巡回ルートに加えて貰った場所に、山盛りのゴミが放置されたのである。

 最初に気付いたのは、美佳であった。

 学校からの帰り道、昨日までは何もなかった所に、見慣れぬものが置かれていたので、近くまで行ってみたところ、それがゴミの山だと言うのだ。

「お母さん。ゴミが捨ててあるよ」

 美佳は家に帰るなり、その事を話した。

「ゴミ?」

「うん。ゴミ置き場に」

「えっ、それ本当?」

「本当だよ」


 美咲は、美佳と一緒に外へ出た。

 ゴミ置き場まで来て、美咲は唖然とした。

 生ゴミ等の生活ゴミだけではない。椅子やタイヤなど、粗大ゴミまで捨ててあった。

「何……よ、これ」

 美咲がゴミを見ていると、今度は美佳の呼ぶ声が聞こえた。

「お母さん」

 美佳が何かを引っこ抜こうとしていた。

「美佳、やめなさい」

「でも、私の傘があるの」

 自力では引き抜けないようである。美咲に注意されて、掴んでいた手を離す。

 美咲にも本当に美佳の傘のようにも見える。藍色に水玉模様の傘が、ゴミの山に突き刺さっている。

「美佳の傘なの? 同じ模様だけど」

「昨日、庭に置いておいたら、傘が無くなってたの。私のお気に入りの傘なのに……」
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