甘いキスは放課後に



あれ?……さっきから感じているこの違和感はなんだ?何も変化などないのに、何かが引っかかってしょうがないこの感じ……。


教育実習生が口を開いた。


「生徒の皆さん、おはようございます。
 今日からこの学校に教育実習としてお世話になります。N大学から来ました。白石隆輔です」


よく通る低くはない声に周りの女子がうっとりする。だけどそんなこと気にしていられない。


教育実習生の声が私の耳に入らずに耳たぶを掠めていく。ゆっくりと見開かれた私の目いっぱいに、その姿を映す。


なぜだろう。こんなにも離れているのに、その一点から視線を逸らせない。これは――そう、くぎづけというやつか。


「短い期間ですが、どうぞよろしくお願いします」


いくらか話して、その結びの言葉を口にした教育実習生は、一歩下がると礼をした。



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