甘いキスは放課後に


「帰りますか」


そう言うと、私はデスク上のペン立てからペンを、メモ帳からメモ一枚をそれぞれ頂戴し、さらさらと手を動かした。帰るとなっては話は早い。別に実習教師を理由に渋っていたわけじゃないのだ。あの状況で、自ら「よし、帰ろう!」と言い出せるほど恥を知らない私じゃない。ようは形だ。気持ちは早く帰りたくても、事の発端の原因が自分だと自覚していながらそれを口にするほどガキじゃない。礼儀知らずじゃない。そこそこに大人で、紗恵に言わせるほどにはガキなのだ。


「何してるの」


そして、それを理解した上で「よし、帰ろう!」を自ら口にしてくれるくらいには、紗恵も『実莉の友達』やってるのだ。いや、「帰るしかないでしょ」か。


「謝罪と、明日の約束のメモ。あと一応弁解も」

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