ピエモンテの風に抱かれて
「そ、そんなのどーでもいいじゃん。そんなことよりもさ…」
「よくないわよ! そんな話、一言だって聞いてな……」
樹里の言葉を遮るかのように、龍は彼女の腰をグイッと引き寄せた。
「ジュリ、気付いてる? あの時計見てみろよ」
龍に促され、日付入りの壁時計に目を走らせると…
< 7・7・MON 201○>
「7日…、7月7日。七夕の日…?」
すると彼は突然真上を向いて首を伸ばすようにして歌い始めた。
「笹の葉さ〜らさら〜、のきばに揺れ〜るぅ〜〜♪」
それは聴き慣れたはずの日本古来から伝わる七夕さま −、ではなく…
「カンツォーネ…、イタリア民謡が交じってる…?」
驚いたように答えた樹里に対し、龍はニッコリと優しい笑みをつくる。
「ジュリの望んだ七夕さまの物語、俺が実現させるから −」
「え…?」