ピエモンテの風に抱かれて

「ジュリ姉!!」




レナと呼ばれた龍と同じ亜麻色の髪をした少女は、勢いよく樹里に抱き着いた。



「レナ、本当にレナなの? 何年振り…?」



「トリノで別れた時以来だよ! よかったあ、まだいてくれて。ごめんね、ごめんね。あの馬鹿アニキ、ジュリ姉のこと無視したりして!!」



170cmはあろうかというスラッとした体型によく似合う高校の制服。何ということだろう、龍の前に車に乗り込んだ女の子は彼の妹だったのだ。樹里にとっては見覚えがあるはずだ。



「でも大丈夫。アニキはああするしかないって言ってた。いま車の中でジュリ姉のこと待ってるから!」



「待ってる? …私を?」



そんな会話を聞いていた警備員が、すまなそうに樹里にへつらった。



「いやあ、本当のお知り合いだったんですね。すみませんでした。ちゃんと言って下さったら良か
ったのに。アハハ…」



そんなことを言われても耳には入ってこない。樹里はレナと一緒に、龍の元へと歩きだしていた。








やっと会える彼の元に −。

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