片恋綴
その人──佐南さんが私を損なふうに見ているなんて全く気付いていなかったので、正直驚いた。そしてその後は罪悪感に見舞われた。

佐南さんの気持ちなんて全然知らなかった私は、永久さんとのことをいつも彼に相談したり報告したりしていたのだ。実の兄以上に相談しやすい相手だったから。

というか、兄は私の口から男の人の名前が出るだけで、その相手のことを抹殺しそうな空気を纏うので相談出来ないだけなのだが。ちなみに、これは比喩でも何でもなく、事実だ。

なので、永久さんとの食事を断ろうか迷っているのだ。

別に、心変わりをしたわけではない。

ただ、佐南さんはこのことをどう思うのだろうかとか考えてしまうのだ。

──これって、自惚れなのかな。

なんか、どちらにも失礼な気がしてしまい、私は勝手に自己嫌悪に陥る。

「なんか、辛いことでもあった?」

私の暗い表情を見てか、永久さんが訊いてきた。

「な、何もないです」

私は首をぶんぶんと振り、答える。

絶対にないことなのだが、こんなに会話すらままならないのに、付き合うことになったらどうするのだろう、とか考える。要らぬ心配とはまさにこのことだ。

その点、佐南さんには何でも話せるし、緊張してしまったり、ということはない。

私はそこまで考えてまた自己嫌悪に陥った。





< 112 / 146 >

この作品をシェア

pagetop