片恋綴
「別にさ、そんなに考えなくてもいいんじゃない?多分、美春ちゃんは、自分のこと最低な女、くらいに思っているんでしょ?」

真宏さんの言葉に私は頷いてみせたが、それよりまだ近くにいる琴子さんの存在が気になって仕方なかった。

「なんか、二人を天秤に掛けてるみたい、とか?」

そんな自惚れたことを思っているわけではないが、実際、それに近いとは思う。やはり、どちらにも失礼なことだと思うのだ。

「告白されたら気になるのは当然だよ。佐南さんだって狡い大人だから、それを見越しての行動だろうしさ」

そうは言われても私には佐南さんが狡い大人には思えなかった。私への気持ちを伝えてくれた彼の目はカメラを構えているときの目と一緒だったから。

本当に大事に思われているのが伝わってきて、泣きたくなるほどに
辛かった。

「……俺は、美容師の男より、佐南さんのほうがいいと思う」

それまで私達の会話には口を挟まなかった浩輔さんが言う。琴子さんはいつの間にか仕事に戻っていて、もう近くにはいなかった。

「あれ、浩輔君的には美春ちゃんとその美容師がくっついてくれたほうが都合いいんじゃないの?」

真宏さんがわざと意地悪そうに言うが、浩輔さんはそれに溜め息を吐いた。



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