片恋綴
結局、永久さんとは食事に行くことにした。もしかしたら、彼には他意はなくて、たんなる誘いの可能性だってある。いや、その可能性のほうが大きいかもしれない。

「待った?」

待ち合わせ時間よりほんの少しだけ遅れて永久さんが姿を見せた。美容室で見るのよりうんと素敵に見える姿。

やっぱり好きなのだろうな、と思う自分。

佐南さんにはいってきます、とだけ告げた。何故かというと、佐南さんのほうから、例の誘い、どうするんだ?と訊かれたから。

いってきます、と言ったときの佐南さんの表情はいつも通りのもで、やはり自分の自惚れなのだろうな、とも思った。

恋に免疫がないから右往左往している。

これは兄の彼女さんに言われた言葉だ。

やっぱり兄には相談したり出来なくて──したりしたら、永久さんも佐南さんもどんな目に遭うかわからないか──兄の彼女さんにしたのだ。

その通りだとも思い、そして結局、自分で決められない自分に嫌気が差した。

恋を知れば知るほど、自分が嫌になる。



< 117 / 146 >

この作品をシェア

pagetop