片恋綴
「何が?」

首を傾げながら言う永久さんに、私は膝の上で拳を握った。

覚悟を決める、というより、言うなら今しかない、と思ったのだ。

「……私、永久さんのことがずっと好きでした」

不意に出てきた科白に自分でも驚く。

「過去形、なんだ」

同じことに気付いた永久さんに言われ、私は曖昧に頷いた。

「まだ、わからないです。でも、今出てきた言葉はそれでした」

別に、佐南さんのほうを好きになったとかではない。そんな簡単に心変わり出来るなら、こんなに苦しくはないから。

「僕ね、失恋したんだよね。しかも、想いを告げることも出来ずに」

やっぱり、永久さんは琴子さんを好きだったのだろう。

「で、美春ちゃんが僕のこと好きっぽいから、何なら付き合うかな、とか最低なこと考えてた」

永久さんの話を静かに聞いていく。

「でも、それじゃあ駄目なんだろうな、て美春ちゃんの沈んだ表情見て気付いた。忘れる、というのは違うけど、次に進むには、きちんと自分から好きにならなきゃ駄目なんだろうなって。だって、まだそいつのこと好きだからね」

いつも口調の柔らかい永久さんに「そいつ」と言われる存在になりたかった。でも、なれなかった。

「ごめんね。今まで繋ぐみたいに変な期待持たせたり、軽く距離置いたり、振り回しみたいで」

永久さんの言葉に私は必死に首を振る。声を出したら涙が溢れてしまいそうだから。

誰が悪いとかじゃない。

皆、それぞれ真剣に誰かを好きになっただけだ。

例え、それが自分を見てくれない相手だとしても。

「美春ちゃん、他に気になる人でもいる?」

そう言われて浮かぶのは佐南さんの顔だが、私が好きなのは紛れもなく永久さんで。そんなシンプルなことも忘れて悩んでいたのだ。



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