片恋綴


「目が合えばぱたぱたと尻尾振ってるみたいだな、て」

原崎さんはそう言ってからにこりと笑った。これは完全に私の気持ちがばれているということだろう。

それでも彼が応えてくれることはない。それが意味していることは、彼は私を恋愛対象としては見ていないということ。

そう考えても気持ちは沈まない。理由は簡単、そんなのとうに気付いているから。

それなのに何故、諦めないのか。

「……本当にやめなさいよ、そういうの」

千歳さんがぼそりと呟いた。

もしかしたら、彼女は原崎さんの恋人なのだろうか、とそんな考えが頭を過る。

そういえば、少し前に原崎さんの職場で臨時モデルをすることになったときがあった。原崎さんはカメラマンのアシスタントをしていて頼まれたのだ。

そのとき、カメラマンである佐南さんの口から千歳さんの名前が出ることがあった。

千歳が泣いていた、と。

そこから関係を推し測ることは難しい。それでも恋人でないということにもならない。


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