あなたのギャップにやられています

ずっと、自分のことを強いなんて勘違いしていた。

全然強くなんてない。
むしろ弱くて、その弱さをカモフラージュするためにワンワン吠えて。


彼の腕の中で、力が抜けていくのを感じる。

ずっと一番近くで仕事をしてきて、彼の作品をリスペクトしてきて……そして、彼の真っ直ぐな姿にいつしか心を奪われていた。

そんな彼が私を包み込んでいる。



「冴子」


彼が私の名を優しく呼んでいる。

ふっと腕の力を抜かれて私が顔を上げると、彼は私を覗き込んで額と額を合わせた。


「大事にする」

「――うん」


私から目を閉じたのは初めてだ。
彼にキスしてほしいと、思ったのは。



< 111 / 672 >

この作品をシェア

pagetop