あなたのギャップにやられています

私の大好きな月夜の絵。
『冴子さんは太陽より月が似合う』なんて言いながら、彼はこの絵をくれた。

もちろんその絵は彼が描いたもので、一目で気に入った私はあれ以来、大切に飾っている。


「大切にしてくれて、うれしいよ」

「もちろん。すごくうれしかったもの」


あっ……これって、オーラ?


「石田は用もないのに冴子出せってうるさくて、しつこく何回も来てただろ?
気持ちを伝えてやるってふりして、待ち合わせ場所を冴子に伝えなかった」

「って……ひどくない?」


それはいくらなんでも、石田さんに失礼じゃない。
嘘ついたってことでしょ?

そういえばある時を境に、私にまったく接触してこなくなったような。


「石田が既婚者でもか?」

「既婚者?」

「愛人になりたかったか?」


彼のその質問に大きく何度も首を振った。

あっ……そういえば……。
あの頃、木崎君は流行っていたドラマの話をしていて、「愛人を作るなんて最低だ。俺はひとりの人を愛するよ」なんて彼らしくない言葉を吐いて驚いたっけ。

まさかの、オーラ、その二?



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