あなたのギャップにやられています

「冴子、しっかり者だとみんなから評価されてるし、自分自身もそう思ってるかもしれないけど、隙だらけだよ。
総務の小沢に、取引先の石田。それと、広報の角川。あとは……」

「なに、それ?」

「なにって、冴子のこと狙ってたやつ。みんな俺が追い払ったけど」

「追い払った?」


小沢も石田も角川も、みんな知ってる。
だけど、狙ってたなんて。


「小沢は冴子の誕生日をしつこくリサーチしてたから、その日は残業入れてみた」


木崎君はリビングの壁に掛けてある小さな絵を指差す。


そういえば、去年の誕生日はいきなり残業だったような。

木崎君が突然色変更したいと言いだして、予定外の仕事が増え、確か二十一時くらいまで会社にいたはずだ。
誕生日なのにと思ったけれど、特に予定もなかったから、ひとりで過ごすより寂しくなくてよかったけれど。


結局、木崎君と一緒に食事して帰ることになって、レストランで突然「おめでとう」って私にあの絵をくれたんだ。
誕生日の話をしたことがあったけれど、まさか覚えていてくれているなんて予想外で、すごくうれしかった。


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