あなたのギャップにやられています

もしかしてゴリラが営業に出ていたら事務の人に渡せるのにと期待していたけれど、あいにくアイツの顔が見える。
くそぉ。仕事行けよ!

私は仕方なくゴリラのそばまで行って、書類を差し出した。


「おぉ、誰かと思ったら、経理の木崎さん」

“経理”を強調しやがったゴリラをにらんで、書類を突きつける。


「接待費、承認されました。可知さんは接待ばっかりなんですねー」


精一杯の嫌味を込めてそう言うと、ムッとした顔のゴリラは私をにらんだ。
それそれ、その顔。それがゴリラそっくりだってば。

イーッ。

口にも顔にも出さないけれど、思いっきりゴリラに向かって恨みの念を送った私は、「失礼しました」と元気よくフロアーを出た。


あんたに落ち込んでいるところなんて見せるもんか!
それが精いっぱいの復讐だ。

< 438 / 672 >

この作品をシェア

pagetop