あなたのギャップにやられています

さてと、次は……。


次の書類はデザイン部だ。
戸塚部長の出張の交通費の承認。

へぇー、また名古屋に行くんだ。
でも、これって二人分の金額だよね?

不思議に思いつつも、誰かを連れて行くんだなんて、かるーく考えていた。
でも……。


「お疲れ様です」


ほんのちょっと前までいたデザイン部のフロアーがもう懐かしい。
私の席だったデスクは、後任もいなくて空いたままだ。
そして、その隣の席の雅斗がデザインを描いていた手を止めて、顔を上げたのがわかった。


「おぉ、冴子。元気か?」

「はい。おかげさまで。部長、交通費OKですよ。二人分、ですか?」


部長の席まで歩み寄って書類を渡すと、戸塚部長は頷いた。


「梶田さんが木崎を気に入ってね」

「えっ!」


梶田さんというのは、雅斗が名古屋に出張した時に会うことができた、この業界屈指の大物デザイナーだ。

< 439 / 672 >

この作品をシェア

pagetop